TGR2021 大賞・新人賞エントリー審査 選評
【大賞】 ELEVEN NINES 「ひかりごけ」
【優秀賞】 Pityman 「おもいだすまでまっていて」
【優秀賞】 劇団 風蝕異人街 シェイクスピア劇「マクベス」
【新人賞】 ゴマに 「世紀末演劇祭」
【特別賞】 新芸能集団 乱拍子 「寿」
今年のTGR札幌劇場祭はエントリー作品が少ない中ではありましたが、このコロナ禍を見つめることによって演劇の役割を自覚したかのような力作がそろい、どの作品もレベルが高くまさに“粒ぞろい” であり、審査も拮抗いたしました。
栄えある大賞には、ELEVEN NINES「ひかりごけ」が選ばれました。
本作品は、重いテーマに沈潜することなくベテラン俳優陣の卓越した演技により、観客を重厚な作品の世界へ惹きこんでいました。
脚本・演出・演技・舞台セットなど、演劇を構成する全ての要素がしっかりと創りあげられており、その完成度の高さが評価されました。
優秀賞には2作品が選ばれました。
Pityman 「おもいだすまでまっていて」は、シンプルなセットの中にも家族の強い絆を感じる作品で、リアルな言葉の応酬の中から家族の姿と絆が浮かび上がり、観客にも身近なテーマとして伝わる作品となりました。また、老婆を男優が演じたことも見事なスパイスとなっていました。
過去の記憶と現在を往来する時間軸の中で、家族が抱える難しい「今」をテーマに、楽しさも交えながら優しく繊細な作劇が評価されました。
劇団 風蝕異人街「マクベス」は、フライヤーの内容から芝居に至るまで、シェイクスピア劇をわかりやすく観てもらう工夫が随所にあり、観客がその世界観に惹きこまれる作品でした。
練達の身体表現やセリフ回しなど、劇団の持つポテンシャルを最大限活かし、人間の本性に迫る舞台となっていたことが評価されました。
新人賞には、ゴマに 「世紀末演劇祭」が選ばれました。
4つの演目をしっかりと使い分け、若さと勢いがある作品でした。コロナ禍での制約が多かったということも予想されますが、スタッフワークなどでの準備不足が目に付いたので、今後は綿密な創り込みができたらもっと良くなると思います。
この状況でエントリーしてくれたことに加え、今後への期待を込めた評価となりました。
特別賞として、新芸能集団 乱拍子 「寿」が選ばれました。
客席と演じ手の熱演による一体感で、子どもから大人まで多くの観客が惹きこまれる舞台でした。
和太鼓を中心とした演目で長年活動され、子どもたちから若手への芸の伝承など、次世代を育て芸能を繋いでいることが評価されました。